豆もやしのメソッド

クルマとバイク、時々アイマスの独りよがりなブログ

劇場版THE IDOLM@STER 鑑賞メモ

かぶきあげPです。
劇場版アイドルマスターを本公開+VideoM@ster版の計4回ばかり観てきたので忘れないうちに感想…とまではいかないまでも、個人的に気づいたことのメモ。
内容のネタバレを多分に含みます。

 

■信号機トリオ

劇場版を初回観た時は特にいおりん無双じゃねえか不平等だな(可愛いけど)などと思っていたが、視聴を重ねるにつれ全くそんなことは感じなくなった。同様の不満は封切後、主に貴音PとやよいPを中心にさんざん叫ばれてきたが、貴音は牡蠣以外にも春香やメンバーへの助言というかささやき?を何度もしており、やよいもバネPの「体力をつけてきたな」発言を筆頭によりよいライブ作りへの積極的な提案が光り、アイドルとしての向上面もさることながら亜美の「ウェーブ!」に即座に反応するノリの良さ、空港でPを見送るときの帽子口元隠し涙目ウルウルなどはまさにやよいの真骨頂といったもので可愛さウルトラハッピーキュア満点であった。さて話が幾分やよい方向に逸れてしまったが、つまりは貴音もやよいも物語の中心たる活躍こそできなかったものの、春香を支えストーリーに華を添える働きは十分こなせていたように感じる。これはその他の765プロのメンバーも同様で、初回鑑賞時では気づかなかった各アイドルの動線が絡みあう中で「いつもの」765プロが形成されているわけであり、"春香の決断"という本筋に触れるか否かの程度の差こそあれ、目立たないキャラなど実はいなかったのである。

春香の次に厚遇されているといわれた伊織は、よく見ると春香に対して直接アドバイスをしていなかった、というのが今回の鑑賞で最大の発見であった。「アンタがリーダーなんだからアンタが決めなさい」と春香が自分で決断するよう促すシーンは多々見受けられるが、水瀬邸での集まりでの「…そうよね」に代表されるように、”春香がやりたいようにすればいいのよ”とはあえてダイレクトに伝えず、春香自身がそれに気づくかどうかを見守っているような雰囲気を感じた。それが彼女なりの諭し方であり、優しさなのであろう。
伊織とは対照的に春香に対して直接的に働きかけたのが、美希と千早の二人である。

志保による「なんであなたがリーダーなんですか」発言の直後の、お手洗いのシーン。美希の「しっかりしてね、リーダー」の一言は春香を茶化して言ったにしても、直前のごたごた(志保と伊織の発言)もあって、いくら明るく前向きがウリの春香にとっても相当堪えたはずだ。「あははは…あいたたた…」とおどける春香の姿に、自分がリーダーとしてバックダンサーの問題を処理できていないこと、また優柔不断な決断に対する不甲斐なさを申し訳なく思う気持ちがにじみ出る。しかし、「でも、はっきり言って悔しいな」とぽつり本音をこぼし始める美希。当然、ライブのリーダーを任されるよりハリウッドデビューの方がアイドル・役者として誇らしいことだろう。でも美希は、プロデューサーにリーダーに選ばれた春香を羨ましいという。そして、去り際に一言、「春香!ミキも自分がやれることはやるの。ライブ、頑張ろうね」…自分の決断ってなんだろう。自分らしさって…?美希が去った後、春香はそんなことを考えてたのではないだろうか。まだ暗い表情からはその”答え”に近づけたようには見えなかったが、闇の中から手探りで”答え”を考え始める最初の一歩になったきっかけが、美希のいう「ミキも自分のやれることはやるの」だったのだと思う。これ以降は”リーダーと春香”の話には直接関わらなかったと記憶しているが、随所で天真爛漫なミキミキらしからぬ表情を見せていたのが印象的だった。その部分は映像を観なければなかなか思い出せないシーンも多いので、今度鑑賞する際には注視していきたい。

 

そして、Pと律子の屋上のていっ!を挟んで、千早とのファミレス?のシーン。ここがファミレスかはわからないしひょっとするとロッテリアかもしれないが、店内ポップの「ごろごろマロンパフェ」はどこのお店にも実在しないメニューのようだ。それはさておき窓際で話し込む春香と千早、春香は可奈からの返信を心待ちにしているが、一向にメールは帰ってこない。

「可奈ちゃんと私の気持ちを重ねちゃいけないって、自分でもわかってるんだけど。…どうすればいいのかな?私が優柔不断だから、みんなを混乱させちゃって…志保ちゃんが言うように、どうして私なんかがリーダーなんだろう…。プロデューサーさんだって、ハリウッド行っちゃうのに…」はじめてメンバーに、千早だけに見せる、弱気なリーダーの姿。千早は思わず目を落とす。

「…って、そんな弱気じゃだめだよね?私はリーダーとして、もっとみんなの意見をまとめなきゃ」春香は自分の立場を思い出し取り繕う。そんな心の内で格闘しもがき苦しむ親友に対し、千早は考え、決して饒舌ではないその口を開く。

「それが春香の気持ちなら、そうしたらいいと思う。リーダーに選ばれたのは春香なんだから」

「うん、そうだよね、リーダーとして…」

額面通りに千早の言葉を受け取る春香は、本当、甘々で、不器用で、ドジで…伊織にも美希にも散々諭された言葉だ。大事なのはここから。

「そうじゃなくて…。そうね、春香らしい答えならってこと…」

「私らしく?私の気持ちでってこと?」

やっと自信への周囲の期待と信頼の根因に辿りついた春香。

「ええ。それが、春香の中で一番確かなものなら。プロデューサーも、それを望んでいるんじゃないかしら」

「でも、みんなはそれでいいのかな?それが、もし間違ってたら?」

「私も、みんなもまだ、春香の答えを聞いてない。今はそれは考えなくていいんじゃないかしら」

困難な状況に陥った春香を救ったのは、紛れもない親友、千早だった。丁寧に、選ぶように言葉を紡ぐ千早。普段の口数の少なさも手伝って、その発言にはなんとも千早らしい気遣いと優しさ、ひとことひとことの重みが込められていた。みんな、どの方向が正しく、何が間違いなのかなんてわからない。でも、春香になら舵を任せられるし、春香が選んだその道が答えだと、そう信じているのだ。そう信じさせる力を、春香は持っている。

千早は続ける。

「私ね、今回のライブに、母親を招待しようと思うの…」

「千早ちゃん!」

「これで何かが変わる訳じゃないけど、このままじゃいけないって思えるようになってきて…。きっと、春香やみんなのお陰ね」

少し恥じらいながら千早が打ち明けるこのシーンが個人的に大好きで劇場版最高最大最強スーパーストロング感動シーンだと思う話はさておき、”千早が母親をライブに招待する”という行動に移せたことは、何より春香が自分に自信を持つきっかけになったのかもしれない。自分のアクションが、千早が彼女なりに一歩ずつ自分を変えていっていることへの助けにわずかでもなっている、ということ。その実感のみならず、千早自身の成長と過去を乗り越える大きな歩みを、誰よりも祝福し喜んでいるのは紛れもなく春香だろう。
千早もずいぶん前向きになった。合宿時のミーティングでいの一番に発言しようとしたり(残念ながらやよいがそれを上回る元気さでかき消してしまったが)、練習初日の春香の「力を合わせて、最高のライブにしよう!」に対して他のメンバーと同様に拳を突き上げておー!と立ち上がっていたり、イヤホンで音楽を聴きながら皆を見つめる目があまりにも慈愛に溢れていたりと、弟の影に怯え、周りの人間を傷つけることを恐れながら歌以外のアイドルの仕事を嫌々こなしていた以前の千早とは大違いだ。特に、早朝ランニング時の海岸でのカメラに対し、「趣味と言える程の腕前じゃ…。今まで歌うことばかり考えてきたから、目の前の色々なこと、見落としてきたのかもって」という言葉、それと、「季節が変わっていくみたいに、みんなも未来に向かって進んでいくよね?だったら、私も変わっていきたい。進んでいくことで見える景色を、私はみんなと一緒に見たいな」という春香に対する、「未来…ええ、そうね」のひとことは、アイドルマスターにおける如月千早総体を考える上で非常に重要な意味を持っている。過去との訣別を果たした彼女にとって、新しく開けてきた”未来”への視座。それを獲得できたのは、春香をはじめとする765プロメンバー全員の協力あってからこそであると同時に、千早自身がメンバーからの作用を受け入れ、自分をなんとか変革させていこうとした努力の賜物なのであった。

 

随分千早パートの話が長くなってしまったが、言いたいのはつまり”これって信号機トリオメインの話だったよね”ということ。春香へのプッシュに関して美希の方は若干押しに弱いかなと思ったが、誰よりも場の読みにセンスがある美希だからこそ、伊織邸での集まりでも多くを語らなかったのかもしれない。輝きの向こう側とは何だったのかとかShinySmileを観ている時の杏奈ちゃんのおめめキラキラとか色々他にも書きたいことは絶えないけれど今日はこの辺にしておこう。