豆もやしのメソッド

クルマとバイク、時々アイマスの独りよがりなブログ

米軍の気持ちになるですよ?─「ミッドウェイ」を観た

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艦これきっかけで映画「ミッドウェイ」を観に行きました。ミッドウェーの名を冠するからにはWWⅡのターニングポイントとなる海戦に至るまでの海面下での権謀術数が丹念に描かれる…かと思いきや大体の戦闘描写がまさかの空戦メイン。

空母エンタープライズ所属の爆撃機乗りである主人公・ベスト大尉は持ち前のクソ度胸を武器に旧日本軍の飛行場や空母を単機で(えぇ…)蹂躙しまくります。しかしながら、苛烈な対空砲火に晒されて呆気なく撃墜されていく友軍機と、急降下爆撃に成功して爆弾1発で対象を大爆発炎上させていくベスト機の違いとはいったい何だったのだろうか…映像を見る限りでは被弾を防ぐ工夫とか老獪な操縦テクニックとかは一切ナシでただただ真っ直ぐ突っ込んでいくだけ、才能があるとか言われてもどう考えても主人公補正で、凄いともなんとも思えず。実在した人物のようだけど流石に美化し過ぎでないですかねぇ、と感じた。最後に肺をやられてしまったのもだいぶポカミスでは?「クソッ 酸素の配分を間違えた」みたいな事言ってたし。本当の所は知らないけど。

また、サブ主人公的な立ち位置の情報部のレイトンさんも非常に真面目そうで魅力的なキャラなんだけど、書類をなんとなく深夜まで読み漁っているだけで部下が収集した情報を吸い上げてるだけ的にしか見えなかったのが残念。「既に日本軍の6割の暗号は解読できています」っていうならそこまで苦労しなかったんじゃないの?と思った。レイトンさんの役割は作業を部下任せの暗号解読っていうよりは寧ろ敵海上・航空戦力の分析であるとかウィークポイントを探索する方に振った方が作品的に良かったんじゃないかなぁと思う。

もちろんハリウッド映画だから作り手も戦勝国的立場にある訳で、アメリカ側が美化されるのはある程度仕方が無い事だとしても、なんとなく腑に落ちない描写が多かった気がする。"戦争という究極の危機的状況で、勝敗を分けたものとは?──"(公式HPより抜粋)というアンサーが、結局はアメリカ兵は勇敢で上層部も優秀、対して日本軍は頑固なアホの集まりだった」といういかにもな言説に終始していたように感じて、個人的には落胆した。つまり、米軍にとって対日戦はリメンバーパールハーバーという文脈の延長線上であり戦闘行為はその為に一切正当化される、やられたからやり返しただけだ、という以上の意味を感じられなかった。不利な状況下でこんなに勝ちましたぁ!と言われても、流石に米軍あるいは米国民の気持ちにしかなれない。もう少し公平な立場で、海戦までの海面下での知られざる紆余曲折を映像化した作品だと(勝手に)思っていたのだけれど…。日本国民としてはそこまで期待して観るべき作品では無いかもしれない。

ただ、戦闘シーンのCGは超スゲー!のと、日本人的には浅野忠信演じる飛龍艦長・山口多聞の最期だけは溜飲が下がる思いがしたのが救い。